第63回指定都市学校保健協議会

第3分科会 心の健康

主題「生き生きと輝く子どもたちを育むための学校保健の推進」

全国20指定都市(人口50万以上の都市)の学校保健関係者(学校医、学校歯科医、学校薬剤師、教育委員会、保健主事、養護教諭、校長等)が一堂に会して、毎年子どもたちの健全な育成のための協議を行う非常に有意義な協議会です。

今年はさいたま市大宮ソニックシティで行われました。第3分科会「心の健康」へ参加しましたので報告します。

第3分科会【心の健康】

日   時  平成24年5月20日(日)13:00~16:30

会   場  市民ホール401,402

指導助言者  埼玉大学教育学部付属実践総合センター教授 尾崎 啓子

運営責任者  さいたま市学校精神科医 鈴木 仁史

司 会 者  さいたま市立大宮南中学校長 井上 馨

口頭提言題及び提言者

1. 養護教諭による個別支援を必要とする生徒への適切な支援方法

千葉市立小中台中学校   養護教諭    伊藤 眸子

2. 人とのかかわりという視点を大切にした心の健康づくり

名古屋市立東志賀小学校  養護教諭    森 佳世子

3. 「薬物乱用防止教室」の取り組み

新潟市立潟東西小学校   学校薬剤師   國井 洋子

4. スクールソーシャルワーカーと連携して行う心の健康問題への支援について

福岡市立田隈中学校    養護教諭    白川 淳子

5. 健やかに生きるための心と体を育む排便指導

~心も腸も動き出すシンデレラストーリー(CD)を作ろう~

静岡市立清水船越小学校  養護教諭    中山 志麻子

6. さいたま市における「心の健康」取組について

~さいたま市保健主事会による研究実践~

さいたま市立常盤小学校  教  諭    野津 美智代

各発表者15分、質疑応答10分の計25分で6名発表がありました。それぞれとてもユニークかつ丁寧な仕事で驚かされました。特に印象に残った2,3,5の発表について報告します。

2番目に発表された名古屋市の養護教諭森佳世子先生。

「人とのかかわりという視点を大切にした心の健康づくり」

『体調不良を訴えて保健室に来る子どもの話を聞いていると、身体の不調が心の問題を原因とするストレス症状ではないかと感じることがある。例えば、頭痛や腹痛を訴える背景に、友達と同じように振る舞わなければ仲間外れにされるかもしれないという不安があったり、友達から嫌なことをされてもそれを誰にも相談できないという悩みがあったりする。自分の思いを相手にうまく伝えることができないような友達関係は、体の不調だけでなく深刻ないじめや不登校といった、より健康でない心の状態につながることもある。「人との上手なかかわり方」とは、相手の思いを意識しながらも、自分の思いをありのままに伝えることができるかかわり方である。それには、子ども同士がかかわり合いながら、みんなで一緒に学ぶことが必要である。

授業実践は5年生を対象に行った。保健学習「心と健康」で「心とからだのつながり」や「不安やなやみへの対処」などを学び、これと組み合わせて保健指導で「人と上手なかかわり方」を取り上げ、9時間完了で計画し実践した。』

私が一番感心したのは、子どもたちに「感情マップ」を作成させて、喜怒哀楽を絵で分かり易く表現したことです。感情を視覚的にとらえる、また、こころのお天気は?と、その状態をいろんな形で表現させる。そのために自分のこころを見つめる習慣を身に付ける。その上で、人と上手なかかわり方として「アサーティブなかかわり」をロールプレイングで体験型授業としたところです。

感情を表す言葉を本当に自分の言葉として使うことができるようにするために、保健室での子どもとのやり取りの中で、「今日の自分の気持ちに合っている言葉は?」「正直な気持ちはどう?」などと確かめ、気持ちを言葉で表現することに慣れさせていく。

集団の授業として係る森先生の試みは本当に素晴らしいと思いました。が、森先生だからこそ、ここまで出来るのではないか?他の先生にも出来るのかは疑問に感じる点もありました。

3番目に発表されたのは新潟市の学校薬剤師、國井洋子先生。

「薬物乱用防止教室」の取り組み

2000年2月から小学生を対象に始められた薬物乱用防止教室。いろいろな手段や手法を駆使しながら、「自分の人生を大切にしよう」で締めくくられます。小学生や保護者に対しても「薬物乱用防止教室」に参加するよう提言なさいました。

フロアーからは、國井先生個人の仕事は本当に素晴らしいと思いますが、学薬の先生全体のレベルアップを図る良い方法があれば是非お教え下さい。との質問が出されました。勉強会を開いたり、パワーポイントを貸し出したりしているという答えでした。新潟市のある中学校長は、前任校の学校薬剤師さんが「薬物乱用防止教室」で3つの力を育てる必要性を力説されていました。「断る力」「判断する力」「相談する力」。本当に感銘を受ける素晴らしいお話ですので、今担当している学校へも来て頂いて話してもらっているそうです。

5番目の発表は、静岡市の小学校の養護教諭中山志麻子先生。

「健やかに生きるための心と体を育む排便指導」

~心も腸も動き出すシンデレラストーリー(CD)を作ろう~

『排便は、私たちの健康と深く結びついている。腹痛をはじめ体調不良を訴える子どもの多くが、排便状況と関係があって来室するが、自分の排便について関心や問題意識に乏しく、いつ便が出たかもよく覚えていない子が少なくない。子どもたちが生涯にわたって心身共に健康に生きていけるように、できるだけ子どもの時期に排便習慣を身につけておくことはとても大切なことである。私たちが、排便について明るく楽しく教えることで、子どもたちが“うんち”を前向きにとらえ心も健やかに育っていくことを願って取り組んだ。

「お悩みシンデレラ 王子様と行くうんちの旅」シンデレラのデジタル紙芝居、CD教材の作製。ストーリーの中で魔法使いのおばあさんから3つのうんち術を教わる。①朝ごはんの術(食べたくなくても、朝必ず朝ごはんを食べよう)②コップ一杯の術(飲みたくなくても朝起きたらコップ一杯、水分をとろう)③うんちタイムの術(出したくなくても必ずトイレに5分すわろう)。一週間のすっきりシートをつけて排便習慣作りにチャレンジした。

「先生、今日もバナナ2本、スッキリ出たよ!」と笑顔で話してくれる。その笑顔がまた未来の子どもたちの心と体を育もうとする私たち養護教諭に大きな力を与えてくれた。』

近年、本当に素晴らしい発表に数多く出会えるようになった。嬉しい限りです。ただ一つ気にかかることは、他の先生方のレベルアップが十分なされているか?という点です。発表された先生方は、その考え方や授業の展開の方法も見事ですが、それに加えて個性豊かな表現力でもって聞いている者を引きつける。あんな先生の授業を聞いてみたいなと、つくづく思います。

全体のレベルアップには、このような協議会に出来うる限りの多くの先生方に参加して頂き、肌で感じていただくのが一番の早道と考えます。会場の雰囲気のほんの一部でもお伝えできる報告書でありたいと思います。

小生は卒業してすぐ赴任したのが現在のさいたま市で、45年ぶりに大宮へ来ました。その豹変ぶりに、否応なく年を感じた協議会でした。

樋口光司